執筆者
YI
Webマーケティングとシステム開発の両領域で企業支援を行う。製造業分野におけるCAD利用・データ活用に携わった経験を持ち、現在はその知見をもとにCADソフトの比較・選定、業務効率化に関する情報発信を行っている。 現場視点とデジタルの両面から、「実務で使えるCAD選び」をテーマに執筆。
投稿日:2026.10.06
CADソフトの情報は、クラウド連携、高性能なワークステーション、最新GPU──そんな「つながる・高スペック」前提で語られることがほとんどです。
しかし、役場や市区町村といった地方自治体におけるCAD現場は、まったく別の世界です。庁内ネットワークはインターネットから分離され、支給PCのスペックは選べず、扱う図面は今も2Dが中心といったように「自治体や公共機関のCAD利用環境の実態」は、これまでデータとして語られる機会がほとんどありませんでした。
IJCAD(システムメトリックス株式会社)では、IJCADを利用中の自治体・公共機関ユーザーを対象に、利用環境に関するアンケートを実施しました。本記事ではその結果から、公共分野のCAD利用環境のリアルなデータを紹介します。
本調査の留意点:回答者はいずれもIJCADを導入済みの自治体・公共機関ユーザーであり、回答数も43件と限られています。本記事のデータは「自治体全体の傾向」ではなく「本アンケートの回答団体の傾向」としてご覧ください。各数値は割合と件数を併記します。
まず、CADソフト「IJCAD」を実行しているネットワーク環境を聞きました。

最多はLGWAN環境の46.5%。オフライン環境と合わせると、74.4%(32件)がインターネットに接続されていない環境でCADを利用していることになります。
LGWAN(総合行政ネットワーク)は、自治体間・省庁間を結ぶ閉域ネットワークです。多くの自治体では、セキュリティ対策として庁内ネットワークを「マイナンバー利用事務系」「LGWAN接続系」「インターネット接続系」に分ける三層分離(三層の対策)を採っており、業務システムや文書作成が行われるLGWAN接続系の端末は、原則インターネットに接続できません。
道路・上下水道・公共施設の図面を扱うCADも、多くの場合このLGWAN接続系(またはスタンドアロンのオフライン端末)に置かれます。今回の調査結果は、この構造をそのまま映したものと言えます。
自治体におけるCAD選定は、インターネット非接続が標準環境であるという前提のもと行われます。
上記のとおり、自治体のCAD選定では、機能一覧の比較よりも先に「この環境で動くのか・認証できるのか」という関門があるわけです。
なお、ライセンス認証や一斉アップデートなど「導入後の運用」でつまずきやすいポイントは、別アンケート記事「自治体のCAD運用でつまずく4つのポイント」で詳しく整理しています。
次に、IJCADを利用しているPC環境です。


この構成は、弊社が2026年6月に実施した民間企業中心のCADユーザーのPC環境実態調査と比べると、違いが際立ちます。

自治体・公共機関では、CAD専用機ではなく事務用として一括調達されたノートPCでCADを動かしている姿が浮かびます。メモリ8GB以下が4人に1人という水準は、民間調査(3.5%)とは桁違いです。
もう一つ特徴的なのは、メモリ容量「不明」が32.6%に上る点です。民間調査では7.0%でした。
これはリテラシーの問題というより、支給PCをそのまま使う運用で、スペックを意識・選択する余地がそもそも少ないことの表れと考えられます。増設や買い替えの裁量が現場になく、「与えられた端末で動くかどうか」がすべてとなっており、これも自治体CAD環境のリアルを表しています。

自治体でCADが使われるのは、道路・上下水道の維持管理、公共施設の営繕、開発申請図面の確認といった場面が中心です。これらの業務では、過去数十年にわたり蓄積された2D図面(DWG/JWW等)の閲覧・修正が主業務であり、2Dのみ93%という数字はその実態を反映しています。
国はBIM/CIMの活用を推進していますが、市区町村の日常業務レベルでは、当面「2D図面を確実に、低コストで扱えること」が実務要件の中心であり続けることが、このデータからうかがえます。
今回の調査から見えた自治体・公共機関のCAD環境をまとめると、ネットワークはLGWAN・オフラインが約7割、PCはノート型・省スペックが主流で現場にスペック選択の裁量が少なく、図面は2Dのみが93%でした。
この環境でのCAD選定要件は、民間企業で語られる「高機能・高スペック・クラウド連携」とはまったく別の軸で構成されます。
言い換えれば、自治体のCAD選びは「何ができるか」より「今の制約の中で確実に動くか」の見極めです。CADの導入・更新を検討する際は、カタログスペックの前に、この4要件を仕様として明文化することをおすすめします。
実際にIJCADを導入した自治体や公共機関が「何を決め手に選んだか」の実データは、別アンケート記事「自治体のCAD乗り換え実態」で紹介しています。
IJCADは、LGWAN・オフライン環境に対応した認証方式を用意しており、全国の自治体・公共機関でご利用いただいています。閉域環境でのCAD導入・更新をご検討の際は、環境要件の確認からお気軽にご相談ください。
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Webマーケティングとシステム開発の両領域で企業支援を行う。製造業分野におけるCAD利用・データ活用に携わった経験を持ち、現在はその知見をもとにCADソフトの比較・選定、業務効率化に関する情報発信を行っている。 現場視点とデジタルの両面から、「実務で使えるCAD選び」をテーマに執筆。
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