お知らせ
株式会社奥村組様
導入事例
株式会社奥村組様に聞く
本社を大阪市阿倍野区と東京都港区に置く免震技術やトンネル施工技術に強みを持つ準大手ゼネコン。
奥村組では2014年以降、インテリジャパン製のDWG互換CAD「IJCAD」を導入している。作図ソフトの維持管理を検討する中、2次元CADはDWG互換CADを利用していくことが同社のコスト削減・業務効率化につながると判断。IJCADは当初10ライセンスでスタートし、2016年11月現在、約170ライセンスとなっている。
免震技術のパイオニア トンネル工事のフロントランナー
「われわれの業務においては生産性向上が大きな課題となっています。そのためにもDWG互換CADへの移行は欠かせないものでした」
(生産技術課課長 吉原宏和氏)
株式会社奥村組は「堅実経営」、「誠実施工」を社是に創業来(1907年創業)、関西はもとより日本の建築・土木を牽引してきた。建築では今ほど関心が高くなかった1980年代から免震技術の研究を開始し、日本初の実用免震ビルを設計・施工するなど『免震のパイオニア』として名高い。土木においては、得意とするトンネル工事の中でもシールド工事に強みを発揮、従来の2倍以上の施工速度を可能にした六角形の”ハニカムセグメント”を用いた施工法を開発するなどトンネル工事のフロントランナーとしての信頼は厚い。
また、昨今では、建設業界において、建設現場における生産性を向上させ、魅力ある建設現場を目指す取り組み“i-Construction(アイ・コンストラクション)”が推し進められる中、同社では、現場におけるスマートデバイスの活用、CIM・BIMの導入加速などICT(情報通信技術)を積極的に活用して生産性向上に繋げる取り組みにも力を入れている。
同社のICT推進の中心的な役割を担う管理本部情報システム部の生産技術課長 吉原宏和氏と課長代理 平井崇氏にDWG互換CAD導入の経緯と効果について聞いた。
左:施工CIMモデル(阪神電鉄 青木駅付近高架橋) 右:施工BIMモデル(奥村組 九州支店)
必要に迫られ DWG互換CADを検討
同社のDWG互換CADの導入は2012年に遡る。当時、2次元CADの大半がAutoCAD。AutoCADからDWG互換CADに変える必要性はあったのだろうか。
導入後わずか2年でIJCADは170ライセンスを超えた。「今後、他社でもDWG互換CADは検討されていくでしょう」(吉原課長)
当時の状況を吉原課長は、
「当時、ネットワークライセンス版の”AutoCAD Civil 3D 2006″を60ライセンスと、スタンドアロン版の”AutoCAD LT”を数百ライセンス利用していました。AutoCAD LTにはネットワークライセンス版がなく、利用するすべてのパソコンにAutoCAD LTのライセンスを購入しインストールしていました。」と話す。利用者すべてが常時AutoCADを利用しているわけではなく、スタンドアロン版のAutoCAD LTでは利用効率も低く、また、管理面でも支障が出ていた。
「AutoCAD LTのライセンス管理は各支社店の管理者が行っていましたが、利用する作業所の開設・閉所があり、利用者の異動やパソコンの置換えも多く、バージョンやライセンス管理は、非常に手間もかかり煩わしいものでした。」(平井課長代理)
DWG互換CADのウリの一つがイニシャルコスト、ランニングコスト、いずれについてもAutoCADより廉価であることだ。また、ネットワークライセンス版であれば、利用状況の把握・管理が容易に行え、システム管理そのものの簡素化につながる。
もう一つ、DWG互換CAD移行へと後押しされたのが、Windows XPからWindows 7へのOSバージョンの変更である。
「AutoCAD Civil 3D 2006はWindows XPまでの対応でWindows 7での動作保障がなく、バージョンアップには多額の費用が必要でした。Windows XPのサポートが終了となる2014年4月までにWindows 7への対応を考える必要がありました。」(平井課長代理)
今も昔もOSのバージョン変更は、企業にとって大きな負担となる。ここがスムーズに運ばなければ事業にもマイナスだ。同社では、”AutoCAD LT”、”AutoCAD Civil 3D 2006″のいずれについてもDWG互換CADへ移行すべきとの機運は高まっていった。
AutoCADと同等なDWG互換CADは存在するのか?
DWG互換CAD導入に足掛け3年の検討期間を要した。「ここまでの道のりは決して平坦ではありませんでした」(吉原課長)
「DWG互換CADはいくつかありましたが、われわれが必要としたのはAutoCADに慣れた利用者がストレスなく作業ができることです。業界ですでにある程度の評価を得ていた数社のソフトを検討しました。」(平井課長代理)
DWG互換CADは廉価であるがゆえに機能性だけを見ればAutoCADより劣ることは否めない。しかしながら、現業部門で使えないものを導入できない。必要とされる機能・性能・操作性すべてを備えたDWG互換CADを選択する必要があった。
「情報システム部で検討を開始し、候補のソフトを現業部門の利用者に試験的に使ってもらいました。まずAutoCADとの相違点を明らかにし、業務への影響がないか、レスポンスや操作性、印刷設定など機能を比較検討しました。検討を開始した頃は、どのDWG互換CADも現業部門から必要とされるレベルには達していないというものでした。」(平井課長代理)
「AutoCADの機能はかなり成熟しており、多種多様な機能が搭載されていますが、利用者の多い施工部門ではそれらすべての機能が必要とされていたわけではありませんでした。そこで必要な機能、操作感など限定して検討を進めていきました。」(吉原課長)
ライセンス管理で必要な適正数の把握についても検討が行われた。
「ネットワークライセンスの適正数を予測するのも大変でした。想定の利用者は約1,000人。これらの利用者が待機なくCADを動かせるにはどの程度のライセンスが必要なのか。ライセンス数の想定は思った以上に難しい作業でした。」(平井課長代理)
最初の互換CAD導入はB社製のCADに
「IJCAD 2013がAutoCADと同じ感覚で業務に利用できるレベルに達したと感じました。」
(生産技術課課長代理 平井崇氏)
このような中、2012年にAutoCADの機能には及ばないものの、施工部門で必要となる最小限の機能を備えていると評価されたB社製DWG互換CAD(以下BCAD)が30ライセンス導入され、AutoCADから互換CADへの移行が開始された。評価の結果、IJCADは要求レベルに達しておらず落選していた。
BCADはその後機能的に大幅に改善されることはなかったものの2014年1月には70ライセンスとなっていたが、当社はバージョンアップの都度、粘り強くIJCADを紹介してきた。
「2013年にIJCADの新バージョン2013を紹介されましたが、すでにBCADを使っていたのであまり興味はありませんでした。過去3度、バージョンアップごとに試してはいましたが、満足いくものでなかったので、”2013″もあまり期待していませんでした。」(平井課長代理)
ところが以前に比べ”IJCAD 2013″の操作性が格段に向上していた。
「これには驚きました。AutoCADとほぼ同様の操作で作図でき、基本的な機能は備わっていたのです。」(平井課長代理)
また、当時のBCADのライセンス管理では、ライセンスを自動解放できないという問題点があった。作業所などでは作図中に急な業務が入り、CADソフトを起ち上げたままで無駄にライセンスを専有することがしばしばあり、一定時間操作のない場合、自動的にライセンスを開放する機能が必要であった。
「B社には以前からその要望を伝えていましたがなかなか実現されませんでした。ところがIJCADではすぐに対応するとの回答をもらいました。CADソフトの良し悪しはもちろん大切ですが、迅速な対応、スピード感もビジネスには重要なものです。」(吉原課長)
IJCADへの乗り換えは、間違いではなかった
現在、導入から2年余りでIJCADのライセンス数は170を超えた。他社製DWG互換CADとの入れ替えとともに、多くの利用者からAutoCADと同じレベルの操作性が好評を得た。
「導入以前からの経過は決して平たんな道のりではありませんでした。ただ、満足いかないときでもシステムメトリックス社は何度も何度も機能・操作性アップにトライしてくれました。熱意は強く感じましたね。」(吉原課長)
「すでに200人以上の作業所職員がiPad+IJCAD Mobileを活用しています」(吉原課長)
IJCADを導入して奥村組の2次元CADに費やすコストはそれまでの7分の1程度に抑えられた。さらに、ライセンス管理作業も簡素化されました。
同社ではiPadの導入にともないモバイルCADソフトとして”IJCAD Mobile”を採用した。
「2015年からiPadを作業所に配備していますが、同時にCADデータ閲覧ソフトとして”IJCAD Mobile”を導入しています。」(吉原課長)
iPad+IJCAD Mobileで工事現場のシーンががらりと変わる。大きな紙の図面を持ち歩いて、担当技術者が頭を寄せて図面をのぞき込む工事現場のどこにでもあった風景はなくなった。携帯性に優れ、なお且つ、簡単なチェック・修正ポイントをメモ表記しておけば、事務所に戻ってその修正点をPCのCADソフトで確認できる。
「ソフトウェアの良し悪しと同等に人と人のつながりがビジネスには重要です」(吉原課長)。左から奥村組様担当営業の泉、吉原宏和課長、平井崇課長代理
「2016年に入ってさらに利用が広がり、現在200本以上のIJCAD Mobileが稼働しています。建築現場の若手職員を中心にiPadの携行を勧めていますが、さらに利用範囲を広げていく予定です。」(吉原課長)
現段階での利用法は、「現場で図面をみること」が大半だということだが、モバイルCADの可能性は無限に広がっている。
「今から思えば、2010年前後はDWG互換CADの黎明期だったのではないでしょうか。注目はされていましたがどのソフトにもパーフェクトといえるものはありませんでした。そのなかで”IJCAD 2013″はDWG互換CADが抱えていた問題点の大部分をクリアしていました。一度BCADを導入してからIJCADに変更したのは、回り道したともいえますが、今では、当社にとってベストの選択をしたと思っています。」吉原課長のIJCAD導入に対する評価である。奥村組ではじまったDWG互換CADへの移行は、2次元CADの性能向上とともに、3次元CADの時代を堅固に下支えしている。
- ※ 株式会社奥村組のホームページ
- ※ 取材制作:オフィスNWK
- ※ 取材日時:2016年11月